今回の宿泊は朝食なしのプラン(20%オフにはなる)。数冊のガイドブックで調べたところ、ホテルから徒歩圏内に早朝から営業しているお店が結構あることがわかっていたので、せっかくなので外に食べに行くことにした。ベトナムでの1食めは…やはり、ベトナムと言えばフォー。そもそもフォーはハノイが本場とのこと。近所にフォー・ガー(鶏肉のフォー)とフォー・ボー・タイ(半生の牛肉のフォー)のお店があったのだが、半生の肉には少々抵抗があったため(私はおそらくある程度の免疫があると思うのだが)、「フォー・ガー・マイ・アイン」というお店に行ってみることにしてホテルを出た。

 部屋にいても聴こえてはいたのだが、一歩外に出るなりクラクションの嵐。道路は大量のバイクと、そのバイクによって行く手を阻まれながら走っている車で埋め尽くされ、歩道もほとんどバイクの駐輪場と化している。まさに「混沌」という言葉がふさわしい感じだ。バイクの隙間を縫うように歩道を歩き、まずは信号のある横断歩道を渡った。そして2つめの横断歩道の前まで来て思わず立ちすくんだ。…信号がない。一体どうやってここを渡れと? ガイドブックに「止まらない、走らない、下がらないが基本」などと書かれていたことを思い出し、意を決して足を踏み出した。するとバイクも車も心得たもので、うまく歩行者をよけながら走り去っていく(決して止まってはくれない)。そんなふうにしていくつかの横断歩道を渡り、無事お目当ての「フォー・ガー・マイ・アイン」に辿り着くことができた。それにしても、この状態では交通事故が絶えないのではないか、と思うのだが…(汗)。

ホテルの前の道 街路樹が多いため、涼しいです 道路の横断の仕方(笑)の動画です 画像をクリックすると動画がスタートします 道路はバイクが多く、ひっきりなしにクラクションの音がします

 「フォー・ガー・マイ・アイン」はその名の通り、メニューはフォー・ガーのみ。お店に入ると空いている席に案内され、注文するまでもなくあっという間にフォー・ガーが運ばれてきた。テーブルの上には様々な調味料が置いてあり、これらを混ぜて自分好みの味にするのだそうだ。まずは何も入れずにそのまま食べてみた。じっくりと煮こまれたスープはしっかりと鶏のだしが効いていて、これだけで充分おいしい。一緒に運ばれてきた揚げパンもスープに浸して食べると、なんとも言えずおいしい。最後の方になってチリソースを入れてみたら味が引き締まり、これもまたいける。ベトナムでの初めての食事は大当たりだった。会計は入り口のところで行う(店によってはテーブルで済ませるところもある)。会計を済ませるとお店のカードを手渡してくれた。このお店はぜひ、お薦めしたい。

朝食はフォー・ガーのお店「フォー・ガー・マイ・アイン」で 店頭でフォー・ガーを作っています 店内はお客さんの出入りが激しく、人気店のようです
フォー・ガー(鶏肉のフォー) スープがおいしいうえ、私の苦手なパクチーがほとんど入っていないのでとてもおいしいです この揚げパンをスープに浸して食べると美味♪ 調味料各種 チリソースやライム、ヌックマムなどがあります

 今日の観光はタンロン遺跡を中心とした、市内を走る鉄道の西側のエリア。ガイドブックによって微妙に情報が異なるのだが、メインの観光地であるタンロン遺跡は午前、午後と入場時間が分かれており、午前は10時まで、または10時半までに入場しなければならないらしい。インターネットで集めた情報だと公開されていないこともある、との記載もあった。もしかしたら無駄足になってしまうことも覚悟のうえ、タクシーはなるべく使いたくなかったし、ホテルからの道がわかりやすいこともあり、徒歩で向かうことにしていた。そうなるとそこそこの時間にはホテルを出発しなければならない。そんなわけで今朝は早めに行動を開始していた。

 ホテルから駅前を通る道をまっすぐ進み、線路を渡って間もなく突き当たった道を左折し、次の交差点を渡るとレーニン像のある広場とベトナム軍事歴史博物館があった。ここまでは手元の地図通りだ。時間があまりなかったので博物館は通り過ぎ、その次の交差点を右折すればタンロン遺跡へ行けるはずだ。しばらく歩くと道路の左手に「Thang Long」という文字の書かれた小さな看板があるのが目に留まった。「本当にここ?」というくらいあたりは閑散としている。世界遺産に登録されているとは思えない静けさだ。半信半疑でその看板のところを入っていくと、係員(警備員?)の男性がいたので、ガイドブックにあるベトナム語で書かれたタンロン遺跡のつづりを指さして、「ここ?」と聞くと、そうだ、と言う。入場は無料。

 ここは11世紀から19世紀にかけて栄えたベトナム王朝の城の跡で、2003年に発見され、現在も発掘作業が続いている(発掘現場の撮影は禁止)。タンロンとは昇龍を意味し、ハノイの旧称なのだそうだ。順路に従って歩いていくと、まずは発掘現場。まさに目の前で遺跡の発掘が行われているのだ。よくテレビでは見ていたけれど、実際に見るのは初めて。なんだか不思議な感覚だった。続いて既に発掘が終わっている何かの建物の跡。こういう時ガイドさんがいれば詳しい説明が聞けるのに、とちょっと残念。入り口から見た時にはわからなかったが、意外と敷地は広かった。

ハノイ駅 電車が停車していました
切符売り場 線路脇ぎりぎりまで民家が並んでいます ベトナム軍事歴史博物館前
国旗掲揚塔 2010年に世界遺産に登録されたタンロン遺跡(旧ハノイ城跡)この看板が目印です

 さて、旧ハノイ城跡に来てしまったということは、途中にあるはずの端門や敬天殿などは通り過ぎてしまったことになる(これらの見どころは「地球の歩き方」の地図にしか載っていない)。せっかくここまで来たのだから、それらも見ていこう、と、もと来た道を戻って行った。すると旧ハノイ城跡とは反対側の道路沿いの壁の一部が開いている個所を発見。確かに「地球の歩き方」の地図には、それらしき場所に矢印が書いてあり、「タンロン遺跡入り口」とある。そこから中へ入ってみると駐車場があり、ガイドブックの写真と同じ、上部が黄色い門が見えた。それこそが旧ハノイ城の第一城壁の正門である端門だ。それにしても、世界遺産にしては情報や案内が少なすぎる。ぜひ、ガイドブックに遺跡の見取り図などを掲載して欲しい。

端門 端門の上部 端門を裏側から見たところ

 端門の先に敬天殿があるはすなのだが、いろいろな建物があって、よくわからずに歩いているうちに後楼まで来てしまった。敬天殿の目印は龍の彫刻が施された階段なので、それを探して歩き回ると、まもなく見つけることができた。…本当に、遺跡内の見取り図が欲しい…。

 敬天殿とは皇帝の宮殿があった場所。龍の階段が皇帝と仕官の居住空間の境目なのだそうだ。現在階段上にある建物は近年建てられたもので、フランス統治時代に司令部が置かれていたのだという。深さ10mの地下室には旧北ベトナム軍の作戦司令部があり、17km離れたハドンという場所まで繋がっていたといわれる地下道もあるそうだ。…が、ガイドブックにも「公開されているが閉まっていることが多い」と書かれていた通り、閉まっていた。…残念。

 続いて先ほどの後楼へ。これは敬天殿の楼閣として建てられたもので、王の側近たちが使っていたのだそうだ。これら以外にもハノイの歴史や遺跡からの出土品などを展示した建物もあり、ゆっくり見て回るには半日は必要だと思った。

敬天殿 龍の階段 フランス軍の司令部が置かれていた建物
後楼 王の側近たちが使っていた建物 後楼の最上部 ここへ登る階段は急でしかも天井が低いので、背の高い人は要注意です

 出口がどこなのかわからなかったので、先ほど入ってきた駐車場脇のところから一度道路に出て、次に向かったのは正北門。この門は805年に造られた、第2城壁で現存する唯一の門で、上部の祠にはフランス軍と戦った英雄が祀られている。この時時刻は既に11時15分になろうとしていた。ダメ元で入り口を探すと、向かって左側に小さな小屋があり、そこでひとり20000ドン払って門の上に上ることができた。…結局ガイドブックにあった最終入場時刻が正確だったのか謎のままだったが、少なくとも11時半頃までは入場が可能らしい。

正北門 入り口は門の左側にあります 正北門の最上部

 昼食は、ここまで歩いてきたからには、更にもう少し頑張って足を延ばして、タイ湖と向かい合うチュックバック湖に面した「バイン・トム・ホー・タイ」へ行くことにしていた(ちなみに「るるぶ」の別冊付録の地図ではお店の場所が間違っています。正しくは「まっぷる」の地図で!)。ここはお店の名前になっているバイン・トム・ホー・タイが名物。昨夜ビア・ハノイを飲んだので、これもハノイならではのビールだというハリダビールと、もちろんバイン・トム・ホー・タイと揚げ春巻(ハノイでは生春巻よりも揚げ春巻の方が主流らしい)、フライドヌードルを注文。バイン・トム・ホー・タイは甘酸っぱいたれにつけて食べるとなんとも美味で、ビールとよく合う。揚げ春巻も香草を使っていないため食べやすく、これまたビールが進む。そんなわけで結局、昼間からビールを4本も空けてしまった。

 余談だが、ここで今日一番の衝撃。それはこのレストランのトイレだ。トイレのドアを開けるといきなり仕切りも扉もない和式の便器がひとつ現れた。一瞬、わが目を疑いつつ、「さすがにこれを使う人はいないだろう。いたとしても子供用でしょう?」と、私はきちんと仕切りと扉のある洋式トイレを使ったのだが…(ちなみに鍵は壊れていた)私が個室を出てくると、なんと、その誰も使わないと思われた場所を使用中のお姉さんがいるではないかっ!!!! これには本気で驚いた。ちなみに男性用のトイレの方は、衛生面で大いに問題がある、と旦那が言っていたので、男性の皆さんは覚悟してお使いください…。

昼食は「バイン・トム・ホー・タイ」で  チュックバック湖に面したレストランです
ハリダビール(20000ドン・約80円) お店の名前にもなっているバイン・トム・ホー・タイ(35000ドン・約140円)はハノイの名物料理のひとつです 右下のたれにつけていただきます
フライドヌードル(35000ドン・約140円) 揚げ春巻(80000ドン・約320円)  食後にはスイカのサービス
このお店はテーブルで会計を済ませます

 昼食後は、予定ではホーチミンの家を見ていこうと思っていた。しかし午後の入場時刻が14時からで、それまでまだあと40分以上あったので諦めることにした。そこで向かったのはホーチミン廟。ここは午前中の1日1回のみの公開で、しかも写真等の撮影は禁止、手荷物の持ち込み禁止、ノースリーブや半ズボン、膝上丈のスカートなどの露出の多い服装はNG、更に廟内での私語禁止等々と実に規制が多い。それもそのはず、その名の通り、ここには1969年9月2日に亡くなった、ベトナムの民族的英雄であるホーチミン主席の遺体が安置されているのだ。しかし、上記の入場にあたっての規制を見た時点で、「ここは外観のみの見物でいいわ」と思っていた。

 入場時間は終わっているため、廟の前は閑散としている。しばらく歩道を歩いていくと、車道が封鎖されている地点に差し掛かった。その先に進んでいいのかわからなかったが、歩道は封鎖されていなかったので、そのまままっすぐ進むことにした。更にしばらく歩くと、警備員(兵士らしい)にここから離れろ、というようなジェスチャーをされた。私たちはてっきり、歩道も封鎖されていたんだと思い、慌てて廟の前にあるバーディン広場の向こうの、並行する道路へ向かった。すると反対側から廟の前の車道を歩いている人たちを見かけた。ところがその人たちは咎められる様子がなかったので、再び元の道に戻ってみた。よく見ると道路に線が引いてあり、その線の内側に入ってはいけないということらしかった。

1975年9月2日の建国記念日に造られたホーチミン廟

 続いて向かったのは文廟。1070年に孔子を祀るために造られたもので、1076年にはベトナムで最初の大学が開設されたのだそうだ。敷地内には、82の亀の形の台座の上に乗った石碑があり、ここには15世紀以降に科挙試験に合格した人の名前が刻まれている。そのことから、この亀の頭の部分に触れると頭がよくなると言われており、学業成就の祈願に来る人が多いのだそうだ。

孔子を祀るために造られた文廟  10万ドン札に描かれている奎文閣
亀の石碑
ホテルに戻る途中に何気なく線路を渡ったら目の前に電車が! 遮断機も何もないんですよ〜(汗) 警笛を鳴らしながらゆっくり走ってはいますが…

 とりあえず、今日見ようと思っていたところはホーチミンの家を除いてすべて回ったので、ホテルに戻ることにした。文廟からは「まっぷる」の地図を頼りに細く入り組んだ道を通って帰った(「まっぷる」の地図はかなり正確だった)。結局、今日の移動はすべて徒歩。その歩数はなんと30000歩超え(距離にすると10km超)。帰りがけに、昨夜ビールを買ったお店に立ち寄ったところ、お店の人が私たちのことを覚えていてくれて、お菓子をおまけにつけてくれた。こんなちょっとしたことでもなんだか嬉しい。部屋に戻ってさっそく買ってきたビールを開け、そのままお昼寝。私たちにしては昼間から部屋で寝ているなんて珍しい。

ホテルの窓からの風景 サーカスのテントが見えています ハノイ市内最大の統一公園が目の前です

 夕食は「歩くベトナム」に載っていた「クアン・コム・フォー」に行ってみることにした。メニューが豊富なうえ、写真つき、との記載があったからだ。お店の場所は朝食を食べた「フォー・ガー・マイ・アイン」の斜め向かいなので、迷うことなく辿り着くことができた。メニューは写真なしのものと写真つきのものと2種類あった。両方を照らし合わせながら迷った末、無難そうな生春巻と空芯菜炒め、そして写真つきメニューにはない、思いっきり冒険の鳩のローストを注文。私はエジプトに行った時に鳩は食べたことがあるのだが、このお店で出されたものはまさに「丸焼き」。ご丁寧に頭と脚まで添えてあるのだ…(汗)。これが写真つきメニューにあったら注文する人は激減するだろう、と思われる。しかしこの鳩の丸焼き、見た目は少々グロテスクだが、味はいい。勇気のある人はお試しあれ…。

夕食は「クアン・コム・フォー」というお店で ハノイビール(20000ドン・約80円)
生春巻(48000ドン・約192円) ちょっと香草の香りが… 空芯菜炒め(35000ドン・約140円) 少々薄味だけどおいしい 鳩のロースト(120000ドン・約480円) 見た目はグロテスクですが、味はいいです



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