「フランダースの犬」の世界へ!(アントワープ・ホーボーケン)

 今日はブリュッセル滞在中のもっとも楽しみにしていた場所、アントワープへ行く日。アントワープといえば「フランダースの犬」! あの、何度見ても涙を誘うラストシーンの舞台になったノートルダム大聖堂や、ネロ少年が憧れ続けた画家、ルーベンスの家があるところだ。更に少し郊外に足を伸ばせば、ネロ少年が住んでいたといわれるホーボーケン村がある。とにかく見どころが盛りだくさんなので、張り切って5時半に起きて、今朝も最上階のレストランで朝食。なんだかんだともう1週間以上同じような朝食にもかかわらず、不思議と飽きたという感じはない。やはり日本のホテルのブッフェのものよりおいしいパンが多いせいだろうか(私はパンが大好きなのだ!)?

綺麗な朝焼け まさに「ミルク色の夜明け」という感じ! ホテルのレストラン
珍しく温かい料理も取ってみました カップが小さいので見えませんが…ミューズリーです グレープフルーツジュース

 8時頃にはホテルを出発し、最寄のルイーズ駅の自動券売機で1日券を買って刻印機に通し、ブリュッセル中央駅方面行きのメトロに乗る。中央駅で下車し、アントワープ行きの国鉄の往復チケットを買ってホームへ向かう。駅のホームは地下鉄でもないのに地下にあり、薄暗くてちょっと怖い感じだ。ホームに入ってきた2階建て車両の2階部分の席を確保し(と言っても混んではいない)、40分ほどでアントワープ中央駅に到着。

メトロに乗ります 青地に白のMマークが目印です 自動券売機 お札も使えて便利 1日券を買いました(EUR3.8・約548円)
ここで刻印します ブリュッセル中央駅
アントワープまでの往復チケット(EUR11.8・約1702円) 駅構内のコンビニみたいなお店
地下鉄ではないんですが、ホームが地下にあります アントワープ行きの列車に乗ります 2階建ての車両です
アントワープ中央駅に到着 「鉄道の大聖堂」と称賛される駅舎は今から100年前のもの
オペラ座

 アントワープ中央駅から「ルーベンスの家」まで歩いていく。駅前の通りをひたすらまっすぐ歩き、鷲の像のある曲がり角を曲がればいい、とのことなのだが、その鷲の像が見つからない。最初は通り過ぎてしまったのだが、手前に噴水があり、やや奥まったところにあったために見落としてしまったのだろう。ようやく「ルーベンスの家」に辿り着いた。

 この「ルーベンスの家」は、彼がアトリエ兼住まいとして1616年から亡くなるまでの24年間を過ごした家だ。しかし、彼の死後、様々な人の手に渡り、老朽化していたものを1937年にアントワープ市が買い取り、復元したものなのだそうだ。入場料EUR5.0(約721円)を支払って家の中へ。まずは控えの間とメインアトリエから見学することにした。多数の作品が生み出されていったこのアトリエには、彼の作品である「受胎告知」や「アダムとエヴァ」などが展示されている。続いて応接室、台所、食堂と進む。それぞれの部屋にはルーベンスの作品の他、彼の美術品コレクションが展示されている。そして一番奥まったところにあるアートギャラリーとドーム型美術館。アートギャラリーは、当時訪れた人々が絶賛する美術品の数々が展示されていた場所で、そのコレクションは絵画だけではなく、素描や版画、地球儀、飾り棚など多岐に及んだのだそうだ。そしてドーム型美術館には彫刻のコレクション。2階には家族用居間、リネン室と角部屋、小寝室、大寝室。室内は全て撮影禁止だが、ルーベンスがしばしば絵に描いたという庭園は自由に撮影してよいとのこと。

「ルーベンスの家」のある曲がり角の目印 ルーベンスの家(EUR5.0・約721円)
日本語のガイドを売っていたので、それを見ながら内部を見学しました
内部は撮影禁止ですが、庭園と建物の外観は撮影可です
この庭園はルーベンスの絵にもよく描かれたんだそうです

 ルーベンスの家を後にして、駅からまっすぐ歩いてきた道を更に進むと、旧市街だ。まずは観光案内所のあるマルクト広場へ向かった。ブリュッセルのグランプラスと同じく、ギルドハウスの並ぶこの広場には「アントワープ」という地名の由来となったブラボーの像がある。ブラボーとは古代ローマの兵士の名前で、シュヘルド川で猛威を振るっていた巨人の手(ant)を投げた(werpen)という伝説が残っている。また、この広場沿いには市庁舎があり、「フランダースの犬」の物語の中で、ここが絵画の展覧会の会場となったのだそうだ。

 観光案内所にはなんと、日本語を話せる係員がいた。有料の日本語パンフレットを買い、いよいよ「フランダースの犬」のラストシーンの舞台となったノートルダム大聖堂、そしてネロとパトラッシュの暮らしていた村、ホーボーケン観光だ。

ノートルダム大聖堂が見えてきました ルーベンスの像とノートルダム大聖堂 マルクト広場
市庁舎 絵画のコンクールがここで開かれ、ネロも出品していました ブラボーの像 ブラボーとは古代ローマの兵士の名前で、シュヘルド川で猛威を振るっていた巨人の手(ant)を投げた(werpen)という伝説がアントワープの名前の由来になったんだそうです
観光案内所 日本語が話せる係員さんがいます 観光案内所で手に入る日本語のガイドブック こちらはEUR2.0(約288円) こちらがEUR2.25(約324円)

 ついにやってきた、念願のノートルダム大聖堂。何度見ても涙なくして見れないあの、「フランダースの犬」のラストシーンの舞台になった場所だ。寺院の前には日本語の刻まれたネロとパトラッシュの記念ベンチがあり、この場所がいかに日本人観光客に人気があるかを物語っている。事実、ベルギーでは「フランダースの犬」の物語はあまり好まれていないのだそうだ。なぜかというと、ラストシーンが悲惨すぎること、そして、アロアの父親をはじめとするネロ少年を取り巻く大人たちの言動があまりにも冷たく、自分たちの祖先が幼い子供にこのようなむごい仕打ちをするなどということはありえない、ということなのだそうだ。…納得…。

 この大聖堂は物語の舞台になったということだけではなく、フランドル地方ではもっとも大きなゴシック様式教会で、世界遺産にも登録されている。1352年から建築が始まり、123mの高さを誇る北塔の完成までに169年間、更に1533年の大火に見舞われるまで増築が進められたという、気の遠くなるような長い年月を経て今の姿となったのだそうだ。教会の内部ではルーベンスの三連祭壇画をはじめ、14世紀に作られた大理石の聖母像、15世紀の壁画など、数々の芸術作品を見ることができる。

「フランダースの犬」のラストシーンの舞台になったノートルダム大聖堂 ネロとパトラッシュの記念ベンチ 左隅にはノートルダム大聖堂の塔が写りこんでます
日本語が刻んであります ノートルダム大聖堂の内部
14世紀に作成された「聖母子像」 阪神淡路大震災後、被災者の心を慰めるためにこの像のレプリカが神戸市六甲のカトリック教会に贈られたんだそうです 16世紀に作成された「アントワープの聖母」
ルーベンスの「キリストの昇架」 「キリストの降架」とこの絵には第2次世界大戦後まではカーテンがかけられていて、お金を払った人しか目にすることができませんでした ステンドグラス「アルブレヒト、イザベラ大公夫妻の十字架礼拝」
金箔、銀箔が貼られた「天使の祭壇装飾」 「聖ヨセフ祭壇装飾衝立」 「聖母の死」
アントワープの貧しい人々に尊敬され、愛されていた司教マリウス・アンブロジウス・カペロの墓所 壁画「悲しみの人」の断片 ルーベンスの「聖母被昇天」
ルーベンスの「キリストの復活」 40年以上もの年月をかけて造られた聖歌隊席 ルーベンスの「キリストの降架」 「フランダースの犬」のアニメではこの絵の前でネロとパトラッシュが息絶えます
「聖母被昇天」 翼廊中央祭壇の銀製アンティペンディウム
契約の櫃型の聖櫃 自然と4大陸(当時知られていたもの)をテーマにした説教壇 告解所
「天使に囲まれた聖家族」 1657年に製作されたパイプオルガン このオルガンを使って演奏しているCDを買ってきました

 立ち去り難い思いでノートルダム大聖堂をあとにして、大聖堂近くのミルクマーケット通りを歩く。ここからホーボーケン村までネロ少年とパトラッシュが牛乳を運んだのだそうだ。しかし…アントワープからホーボーケンまでは結構な距離があるのではないだろうか? この距離をミルク缶を積んだ荷車をひいて往復歩くなんて、相当重労働だったはずだ。

 昼食はブラッスリー「ペログラム」で。入り口を入って地下に降りると、ろうそくの明かりだけのなんとも落ち着いた空間になっていた。とにかくここベルギーではいろいろなビールを試してみたかったので、メニューの中から飲んだことのないものを選んで注文した。スタッフは笑顔を絶やさず、とても丁寧な応対をしてくれた。

ミルクマーケット通り ネロとパトラッシュはこ
こから牛乳を運んだんだそうです
ブラッスリー「ペログラム」で昼食 スタッフがとても感じのいいお店です
店内は蝋燭の明かりだけなんです
ギルデン(でいいのかなぁ?)はEUR2.3
(約332円)
牛肉のステーキのビールソース
(EUR16.85・約2430円)
ウェストマレ ダブル
(EUR2.75・約379円)

 昼食後はフルン広場(ノートルダム大聖堂脇の広場)沿いの郵便局前の乗り場からトラムに乗り、ホーボーケンへ向かう。車内で1日乗車券を買い(アントワープからホーボーケンを往復するだけでも既に1日券の方がお得なのだ)、およそ20分ほどで到着した終点で下車。

フルン広場の郵便局前のトラム乗り場 4番のトラムでネロの住んでいた村、ホーボーケンへ向かいます
トラムに乗ります
切符(1日券も含む)は車内で買えます(EUR3.0・約433円) 終点でトラムを降りました

 まずは情報センターへ、と思っていたのだが、気付いたら通り越してしまったらしく、聖母教会まで来てしまった。ここにはネロとパトラッシュが葬られているらしい。教会の中に入ることはできなかったので、教会の周囲を1周して、今度こそ情報センターへ向かった。情報センターで日本語も載っているホーボーケンのガイドをもらい(無料)、アロアの家の風車(縮小模型・現在、本物の風車を再建しようという計画が進行中とのこと)を目指して歩く。せっかくここまで来たのだから、と途中にあったブロイデンボルグ城、ソルグヴリート城、メールレンホフ城(どこも内部は見学できなかった)を経由して、アロアの家の風車を見て、アントワープ行きのトラムに乗った。

聖母教会 ネロとパトラッシュはここに葬られたと言われています
かつてはこのあたりが墓地だったとか ネロとパトラッシュの像 情報センター内の「フランダースの犬」に関する展示
無料でもらえる日本語も載っているガイド ブロイデンボルグ公園
戦争犠牲者の冥福を祈って造られた英雄記念碑 ホーボーケンの街並み 16世紀前半に造られたブロイデンボルグ城
ソルグヴリート城 メールレンホフ城 この道の突き当たりがアロアの家の風車らしい
アロアの家にあった風車を復元したもの 帰りは風車の先にある通り沿いにある乗り場から12番のトラムで

 思ったよりも早くアントワープに戻ってくることができたので、ルーベンスの墓がある聖ヤコブ教会を見学していくことにして、オペラ座前でトラムを降りた。聖ヤコブ教会は1491年から1656年にかけて造られたゴシック様式の教会で、堂内には1643年建造のルーベンス礼拝堂があり、ルーベンスや彼の親族が埋葬されている。その祭壇画は彼が亡くなる6年前に描いた「聖人たちに囲まれるマリア」。この絵画の中の聖母の姿にはルーベンスの2番目の妻の面影があるのだそうだ。

まだ時間が早かったのでオペラ座前でトラムを降りました ルーベンスの墓がある聖ヤコブ教会 ルーベンス家の墓
ルーベンスが自らの墓所のために選んだ「聖人たちに囲まれるマリア」

 このまま駅に向かうのがどうしても名残惜しかったので、もう一度ノートルダム大聖堂へ向かった。教会の鐘の音に見送られつつ、メトロに乗ってアントワープ中央駅へ戻った。

精肉業者のギルド博物館(今は閉鎖中) 最後にノートルダム大聖堂を見納め
マルクト広場 ノートルダム大聖堂の鐘 画像をクリックするとスタートします(475KB)
ステーン海洋博物館はもともとは13世紀初頭の要塞でアントワープ最古の建築
メトロ乗り場 メトロのアントワープ中央駅の駅名は「ダイヤモンド」

 ブリュッセルに戻り、一度ホテルに寄ってから徒歩で市街地へ向かい、夕食は「ファルスタッフ」というブラッスリーで。アールヌーヴォー様式の落ち着いた内装のお店だ。まずは1杯めのビールを注文し、食事もビールを使ったものを注文(昼食と大差ない内容になってしまった)。本当はチコリのグラタンが食べたかったのだが、シーズンでないためかメニューにはなく、注文できなかった。ないとなるとますます食べたくなるチコリのグラタン…滞在中に果たして食べることができるのだろうか…?

ブラッスリー「ファルスタッフ」で夕食
デュベル(EUR3.0・約433円)
ジュピラー(EUR2.0・約288円) フランドル風カルボネード 牛肉と玉ねぎをビールで煮込んだものです(EUR12.0・約1730円)

 ブリュッセル到着日には緊張して歩いたグランプラスだが、街に少し慣れてきたこともあるし、せっかくなのでライトアップを見てからホテルに戻ることにした。夜のグランプラスは建物が金色や銀色に輝いて、昼間よりも更に壮観。やっぱり来てよかった。

ライトアップされたグランプラス 市庁舎
王の家 プレメトロ(地下も走るトラム)の駅

 明日はブルージュへ行く予定。少々お疲れ気味だけど、頑張って早起きしなくちゃ!




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